Desperationのレビュー
神とは残酷である
絶望という名の神の領域へ。もちろん案内役は地獄の警察官コリー・エントラジアン。単なる化け物を超越した存在の『それ』。 『IT』と『それ』は似て非なるもの。もしくは悪魔。砂漠で隔絶された町で繰り広げられる想像を絶する戦いは、神の啓示を受けた11歳の少年を非情にも巻き込みつつ、『神とは』『人生とは』と、ピットの奥にポカリと空いたブラックホールへ読者に有無を言わせず引き摺りこむのだ。キングの到達した血塗れの定義。すなわち、
『神は残酷である』
親子4人。夫婦連れ。書けなくなって旅に出たた中年作家。呼び出されたその作家のマネジャーと女性ヒッチハイカー。そしてデスペレーションの町の物言わなくなった人々。おおっと忘れちゃいかん。タック。キャン・タの中のキャン・タック。太古の昔に鉱山の奥深く封じ込められていた『それ』が目を覚ます。なぜ殺戮を繰り返すのか。なぜ少年らは生かされたまま牢獄!へ拉致されるのか。そして、なぜ彼らはそれと戦うのか。少ない登場人物と静か過ぎる町という状況設定のせいで読者は考える葦となり、登場人物は思索する。思索する間にも殺戮は続くのだ。神が与えたもうた試練。
残虐の限りを尽くす『それ』。邪悪過ぎて怖さを忘れる存在。死屍累々の場面でも、読者はその背後に潜む神の意志を感じ取ろうと読み込むのだ。さらに奥深く。そして、キングは饒舌さの中に、読者のその欲求に確かに答えを出してくれた。感動のクライマックス。 中年作家の真の使命とは。ラストでヴィッドがつぶやいたその言葉にすべてが集約される。『神は…である』。キングの全作品を俯瞰する神の意志と言ってもいいかもしれない。
そして鏡に映ったもう一つの世界へ。偽名癌で亡くなったリチャード・バックマンが描く『レギュレイターズ』。テーマは少年と悪。 それ=悪は少年をどこへ導いて行こうというのだろうか。もう一つのペンネームでキングは何を描きたかったのか興味は尽きない。分裂した最新作の同時刊行という離れ業はさすがキングと言う他ない。

どうも傑作‘Firestarter’の後に読んでしまったせいか、あの夢見るような物語と比較してしまってどうも居心地が悪かった。確かにKingの筆の力に魅力を感じるのだけれども、なぜこの本を書く必要があったのか、と考えさせられてしまった。何時ものMaineと違って、Nevadaと言うアメリカでも人里から離れた所に場所を設定したせいか、ややKingらしくない違和感さえ感じさせられてしまった。
そしてKingほどの作家ならばこの発想をもとにもっと違った小説を書けたのではないか、と言う読後感が残ってしまった。
同時に発表された‘The Regulators’に少し期待しましょう。